近くに見える
別宇宙
タイトルページ重力レンズ
揺目紗
中田良作

宇宙観測において、赤方偏移は長らく距離の指標として扱われてきた。
遠方の天体ほどスペクトルが赤側へずれるという事実、宇宙が膨張しているという標準的な解釈を支えてきた。
しかし、光が宇宙空間を伝播する際に通過する重力場の影響を精密に考慮すると、この赤方偏移の解釈には再検討の余地が生じる。
宇宙には、観測可能な通常物質だけでは説明できない質量が存在する。
この不可視の質量はダークマターと呼ばれ、その正体は未解明のままである。
しかし、光を放たず反射せず吸収するブラックホール群、すなわちブラックマターがその候補として最も合理的である。
特に、原子よりも小さく光を反射せず内部の光も外へ出さないマイクロブラックホール(MBH)は、観測手段によって検出されないまま宇宙全体に広く分布している可能性が高い。
MBH の強い重力場を光子が通過する際、重力レンズ効果だけでなく重力波の放出によるエネルギー損失が生じる。
これが赤方偏移として観測されるならば、赤方偏移の大きさは距離だけでなく光路上のブラックホール分布によっても左右される。
この視点に立つと、従来の宇宙像は大きく変わる。
遠方の天体ほど赤方偏移が大きいという観測事実は、必ずしも宇宙膨張速度の増大を意味しない。
光路上にブラックマターが多ければ近い天体でも大きな赤方偏移を示し得るし、逆に光路が空隙であれば遠方の天体でも赤方偏移が小さく観測される可能性がある。
このような光路依存性を考慮すると、我々が近くにある星と認識している天体の中に、実は別宇宙からの光が紛れ込んでいる可能性すら生じる。
別宇宙の存在を断定することはできないが、否定する根拠もまた存在しない。
本書は、MBH の連続分布と光路の重力場構造をもとに、赤方偏移の再解釈を試み、観測される宇宙像の背後に潜む可能性を科学的に検討するものである。

第1章 赤方偏移

赤方偏移は、長らく宇宙膨張の証拠として扱われてきた。
遠方の天体ほど赤方偏移が大きいという観測事実は、宇宙が加速的に膨張しているという標準モデルを支えてきた。
赤方偏移には複数の種類が存在する。
ドップラー赤方偏移は、光源と観測者の相対運動によって生じる。
重力赤方偏移は、光の出発点と観測点の重力場の差によって生じる。
宇宙的赤方偏移は、宇宙膨張によって光の波長が伸びる現象である。
これらは、いずれも光の波長が伸びるという点では共通しているが、本書で扱う赤方偏移はこれらとは異なる性質を持つ。
本書で扱う赤方偏移は、光子が強い重力場を通過する際に重力波を放出し、その結果としてエネルギーを失うことで生じる赤方偏移である。
光子は、ブラックホールやマイクロブラックホール(MBH)の近傍を通過する際、重力場の急峻な変化を受ける。
このとき光子は重力波を放出し、わずかにエネルギーを失う。
このエネルギー損失が赤方偏移として観測される。
この赤方偏移は、光源と観測者の重力場の差によって生じる重力赤方偏移とも異なる。
光子が通過した空間の重力構造そのものが赤方偏移を決めるため、光路の違いによって赤方偏移の大きさが変化する。
したがって、赤方偏移は距離だけで決まるものではなく、光がどのような重力場を通過してきたかによって決まる。
光路上に MBH が多ければ、近い天体でも大きな赤方偏移を示す。
逆に光路が空隙であれば、遠方の天体でも赤方偏移が小さく観測される可能性がある。
この視点は、従来の宇宙像を根本から揺さぶる。
赤方偏移は天体の距離ではなく、光が通ってきた宇宙空間の重力履歴を示している可能性が高い。
本章では、赤方偏移の従来の分類を整理し、本書で扱う赤方偏移の位置づけを明確にした。

第2章 ダークマター

ダークマターとは宇宙に大量に存在するとされながら正体が分かっていない不可視の物質を指す。
観測される銀河の回転速度や銀河団の重力結合の強さは通常の物質だけでは説明できず追加の質量必要とされている。
その追加の質量がダークマターと呼ばれている。
ダークマターは光を発しないため望遠鏡では直接観測できない。
しかし重力レンズ効果や銀河の運動からその存在は確実視されている。
問題はその正体が何であるかという点である。
現在の主流説ではダークマターは未知の素粒子であるとされている。
ウィンプと呼ばれる弱く相互作用する重い粒子やアクシオンなどが候補として挙げられている。
しかしこれらの粒子は未発見であり実験的証拠は得られていない。
本書ではダークマターの正体を別の視点から捉える。
それはダークマターがブラックホールの集まりであるという考え方である。
ブラックホールは光を発しないため観測されにくく大量に存在していても不思議ではない。
強い重力場により光の進路が曲げられ、自然な形になっていない銀河団の観測写真を下に示す。
銀河団の重力は、背景の光を一方向に曲げるのではなく、位置によって曲げる方向が異なる。
そのため、背景銀河は場所によって異なる方向に引き伸ばされる。これは重力レンズ効果と呼ばれる。
白い矢印で示した銀河は、強い重力レンズ効果を受けており、四十五度方向に細長く伸びている。
黄色い矢印で示した銀河は、弱い重力レンズ効果を受けており、百三十五度方向にそって伸びている。
自然な銀河の向きは本来ランダムであるため、複数の銀河が同じ方向にそろって伸びていること自体が不自然であり、重力レンズの影響を受けている証拠となる。
図のように銀河団の形を歪ませるためには、計算上、中心の巨大銀河の質量だけでは不十分である。
観測される光の曲がり方を説明するために必要な質量を計算すると、観測できる質量では全く足りず、観測できない質量が大量に存在しなければならない。
銀河団実測結果

第3章 マイクロブラックホール

マイクロブラックホール(MBH)は、原子よりも小さく、光を放たず、反射せず、吸収するため観測装置には映らない。
しかし、質量は大きく、重力場は強く、宇宙初期に生成され現在まで蒸発せず残っている。
MBH は宇宙空間に多数存在しており、その分布は均一ではなく、密度の高い領域と低い領域がある。
観測される重力場の強さから推定される不可視質量は、可視物質だけでは説明できず、MBH の多数存在によって補われる。
MBH は光学的には完全に不可視であるが、重力場としては確実に存在し、宇宙空間の構造形成に大きく寄与している。
光子が MBH の多数存在する領域を通過する際、重力場によって進行方向がわずかに曲げられる。
光が曲げられる瞬間には重力波が放出され、その分だけ光子はエネルギーを失う。
このエネルギー損失は微小であるが、光子は長い距離を進むため、損失が積み重なり赤方偏移として観測される。
赤方偏移は距離だけでなく、光路上の重力場構造によって決まるため、MBH の分布が赤方偏移の大きさに直接影響を与える。
MBH が多数存在する領域では重力場が強く、光子は進む間に何度も方向を変えながら進行する。
そのたびに重力波を放出し、エネルギーを失うため、赤方偏移は巨大ブラックホールの近傍で生じる重力赤方偏移よりも広い領域で連続的に作用する。
MBH の集団は巨大ブラックホールよりも広い範囲に分布しているため、光子は長い距離にわたって重力場の影響を受け続ける。
このため、MBH の集団による赤方偏移は、巨大ブラックホール単体よりも強く現れる可能性がある。
MBH は観測できないが、質量は確実に存在し、重力場を周囲に及ぼす。
この不可視の質量こそが、ダークマターの主成分である。
ダークマターとして推定されてきた膨大な質量は、MBH の多数存在によって説明できる。
MBH は光を放たず、反射せず、吸収するため観測できないが、重力場としては確実に存在する。
よって、MBH は「見えないが質量を持つ物質」としてダークマターの主成分となる。

第 4 章 ブラックマターの性質

マイクロブラックホール(MBH)は、光を放たず、反射せず、吸収するため観測装置には映らない。
しかし、質量は確実に存在し、重力場を周囲に及ぼす。
この性質は、通常の物質とは全く異なる特徴である。
MBH は極めて小さく、原子よりも小さな領域に質量が集中している。
そのため、光学的な観測手段では MBH を捉えることができない。
光を放たず、反射せず、吸収するという三つの性質が重なり、観測者には完全に不可視となる。
MBH は観測できないが、重力場は強く、周囲の空間を確実に歪める。
重力場は光学的な観測とは独立して存在するため、MBH が見えなくても重力場だけは観測される。
この不可視の重力場が、宇宙の構造形成や銀河の運動に大きな影響を与えている。
MBH は宇宙初期に生成され、現在まで蒸発せず残っている。
極小であるにもかかわらず、質量は大きく、重力場は強い。
このため、MBH は宇宙空間に多数存在し、観測されない質量として重力場を支えている。
MBH は光を放たず、反射せず、吸収するため観測できないが、重力場としては確実に存在する。
この性質は、ダークマターとして推定されてきた不可視質量と完全に一致する。
観測されないが質量を持ち、重力場を周囲に及ぼすという特徴は、MBH の性質そのものである。
よって、MBH は質量はあるが見えない「ブラックマター」となる。
ブラックマターは光学的には不可視であるが、重力場として宇宙の構造を支えている。
MBH の多数存在によって、ダークマターとして推定されてきた膨大な質量が説明される。
この不可視の重力場が、銀河の回転速度や宇宙の大規模構造を支えている。
MBH は光学的には見えないが、重力場として宇宙の根幹を形成している。

第 5 章 光のエネルギー損失

光子は重力場を通過する際に加速や減速を受ける。
この加速や減速の瞬間に光子は重力波を放出する。
光子が重力波を放出することによって光子自身のエネルギーは減少する。
このエネルギーの減少が赤方偏移として観測される。
光子が重力場を通過するということはマイクロブラックホールの近傍を通過する場合を含む。
マイクロブラックホールは極めて小さくその近傍では重力場が急峻である。
光子はこの急峻な重力場の中で進行方向をわずかに変えながら進む。
進行方向が変わる瞬間に光子は重力波を放出する。
その結果光子のエネルギーは減少する。
光子が重力場を通過するということはマイクロブラックホールの集まりとしての重力場を通過する場合も含む。
マイクロブラックホールは多数存在しその集まりとしての重力場は広い領域に及ぶ。
光子はこの広い重力場の中で進行方向を何度もわずかに変えながら進む。
進行方向が変わるたびに光子は重力波を放出する。
その結果光子のエネルギーは減少し赤方偏移が積み重なる。
これはアインシュタイン方程式
G(μν)= (8πG / c4) T(μν)
が示す光のエネルギーや運動量も重力源であるという原理に基づく。
光子は重力場の中で進行方向を変えるたびに重力波を放出しその分だけエネルギーを失う。
このエネルギー損失が赤方偏移として観測される。
この赤方偏移はドップラー効果による赤方偏移とは異なる。
ドップラー効果による赤方偏移は光源と観測者の相対的な運動によって生じる。
光子が重力場を通過する際に生じる赤方偏移は光子自身が重力波を放出することによって生じる。
この赤方偏移は光子の進行経路に沿った重力場の構造によって決まる。
光子が重力場を通過する際に生じる赤方偏移は波動的赤方偏移である。

第 6 章 理論による説明

光子が重力場を通過する際に生じる赤方偏移は一般相対性理論と量子論の結合によって説明される。
一般相対性理論によれば、重力場は時空の歪みであり、光子はその歪みに沿って進む。
量子論によれば、光子はエネルギーと運動量を持つ波動である。
光子が急峻な重力場の中を通過する際、時空の歪みとの相互作用によって、光子のエネルギーの一部が重力波として空間に放射される。
この重力波の放射は、アインシュタインの重力放射公式に基づいて計算される。
光子が進行方向を変える際の加速度運動が重力場の変動を引き起こし、重力波が発生する。
放出された重力波が持ち去るエネルギーの分だけ、光子自身のエネルギーは減少する。
量子力学的な表現をすれば、光子が重力場を構成する重力子(グラビトン)を放出するプロセスとして解釈できる。
この連続的なエネルギー減少は、波動の性質として周波数の低下、すなわち波長の増大をもたらす。
宇宙空間に高密度で分布するマイクロブラックホール(MBH)の群れを通過する光子は、この微小なエネルギー損失を無数に繰り返す。
この蓄積された結果が、長距離を伝播した光に観測される波動的赤方偏移の理論的背景である。
この帰結として、赤方偏移の大きさは距離に比例するだけでなく、光路上のブラックマター密度に依存することが数理的に導かれる。

第 7 章 ブラックホール質量の連続分布

本章では、ブラックホールの質量と数量が「連続的な指数分布」として記述できることを示し、その総質量がダークマターの質量 5.5×10^53 kg と一致することを数理的に確認する。
さらに、その分布の中で p=11〜17 の領域、すなわちマイクロブラックホール(MBH)が全体の 99.9% を占めることを示し、グラフによって視覚的に理解できる形に整理する。
まず、ブラックホールの質量を 10 のべき乗で表す。
M = 10^p [kg]
ここで p は 11 から 41 まで連続的に変化する指数であり、p=11 が最小質量、p=41 が最大質量に対応する。
次に、各質量帯に属するブラックホールの数量 n を指数分布として定義する。
n = 10^{a(41 − p)}
ここで a は分布の傾きを決める定数であり、後に総質量がダークマターの質量と一致するように決定される。
各質量帯の総質量 m(p) は次の式で与えられる。
m(p) = M × n
m(p) = 10^p × 10^{a(41 − p)}
m(p) = 10^{p + a(41 − p)}
全ブラックホールの総質量 M_total は、p=11〜41 の全帯域について m(p) を足し合わせることで得られる。
M_total = Σ 10^{p + a(41 − p)} (p=11〜41)
ここで M_total は、p=11 から 41 までの全ての質量帯について m(p) を足し合わせた値であり、全ブラックホールの総質量を表している。
ここで、定数 a を
a = 1.40967
とすると、数値計算の結果、総質量 M_total は
M_total ≈ 5.5×10^53 [kg]
となり、これはダークマターの質量として見積もられている値と一致する。
この一致は、ブラックホールの質量分布が適切に選ばれれば、ダークマターの正体を「ブラックホールの連続分布」として説明できる可能性を示している。
特に重要なのは、質量の大なブラックホールが総質量にほとんど寄与せず、極小ブラックホール(MBH)がほぼ全てを占めるという結果である。
実際に、p=11〜17 の領域、すなわち MBH に対応する質量帯だけを取り出して総質量を計算すると、その値は全体の
99.9%
を占めることがわかる。
対数表示
対数グラフでは、横軸に p(質量指数)、縦軸に log(m(p)) を取る。
m(p) の対数が p に対してほぼ直線として並ぶことで、ブラックホールの質量分布が指数関数的であることが視覚的に示される。
この直線性は、宇宙創成の自然性から、ブラックホールの質量が指数関数的に散在する分布が最も自然であることを示している。
実軸表示
実軸グラフでは、縦軸に m(p) をそのままプロットする。
MBH 領域だけが巨大な値となり、他領域は地平線のように平坦になることで、総質量の 99.9% が p=11〜17 の質量帯に集中していることが直感的に理解できる。

第 8 章 光路と赤方偏移のゆらぎ

ブラックホールの分布は宇宙全体で均一とは限らない。
光子が宇宙を進む際に通過する重力場の強さや密度は光路によって大きく異なる。
そのため、赤方偏移は距離だけで一意に決まる量ではなく、光路の条件によって揺らぎが生じる。
光子は重力場を通過するたびにわずかなエネルギーを失う。
このエネルギー損失は重力波の放出によって生じるため、重力場の強さと密度に依存する。
マイクロブラックホール(MBH)が密集している領域では光子が通過する回数が増え、赤方偏移は大きくなる。
逆に、MBH が少ない領域では光子が重力場を通過する回数が減る。
そのため赤方偏移は小さくなる。
同じ距離にある天体であっても、光路が異なれば赤方偏移が異なる可能性がある。
このゆらぎは、従来の「赤方偏移=距離」という単純な解釈に修正を迫る。
赤方偏移は距離の指標であると同時に、光路の重力環境を反映した量でもある。
宇宙膨張だけでは説明できない赤方偏移のばらつきが観測される理由は、光路の重力場の不均一性にある可能性が高い。
MBH の分布は銀河周辺や銀河間空間で大きく変化する。
銀河団内部では MBH が密集し、光子は強い重力場を何度も通過する。
そのため赤方偏移は大きくなる。
一方、銀河間の空間では MBH が少なく、赤方偏移は小さくなる。
このように、赤方偏移は光子が通過した「重力の履歴」を反映する量である。
距離だけでなく、光路の重力場の密度や分布が赤方偏移を決定する。
そのため、赤方偏移の解釈には光路の重力構造を考慮する必要がある。
光路のゆらぎは、宇宙膨張論の解釈にも影響を与える。
赤方偏移が距離だけで決まると仮定すると、宇宙は一様に膨張しているように見える。
しかし、光路によって赤方偏移が変化するなら、膨張の一様性は観測上の錯覚である可能性が高い。
さらに、光路のゆらぎは「別宇宙の光が近くに見える」という可能性にもつながる。
もし光路が MBH の少ない領域を通過した場合、赤方偏移が小さくなり、本来は遠方の光が近くに見えることがあり得る。
本章では、光路と重力場の不均一性が赤方偏移にゆらぎを生じさせることを示した。
赤方偏移は距離の絶対指標ではなく、光子が通過した重力環境によって変化する量である。

結びのことば

MBH の連続分布と光路の不均一性は、観測される宇宙像を静かに歪め続けている。
そのわずかな揺らぎが、遠方の光を本来の位置より手前に投影し、「近くに見える別宇宙」という本書の主題を現実的な可能性として浮かび上がらせる。
この現象は、一般相対性理論と量子論の双方から説明できる物理的帰結であり、いくつかの光は、我々の宇宙の外側から届いているのかもしれない。
本書では、その可能性を静かにここに記しておく。